ちょっとやそっとで満足できない


雨が降れば顔のペンキは剥がれていった。心臓も動いていなかった。透けた手だって、掴むことはできなかった。
臆病になる度に現れるのはそれで、生に触れる度に苦しくなるのもそれ。命を吹き込んだのは私で、動き始めたのは彼の意思。


過去の自分を今に連れて来られないって泣き笑いながら言うから、一生手を繋いでいたいと思った。
冷たさが伝わってくるときも、熱が伝わってくるときも、どうしてだか泣きそうになる。軋む音をほんの少しでも感じたい。澄ます耳は役立たずじゃない。


手を伸ばしたところで届くわけがないってぼやいていた。伸ばしていないどころか、立ってすらいなかったのにね。